2016年の秋頃からGoogle翻訳ツールの精度が向上していることをご存知でしょうか?
今までは単語や文章をパーツごとに翻訳していたのですが、新たな機械学習アルゴリズムにより、自然な文章の流れとして翻訳するようにシステムが変更されました。
しかし、これが『契約書』となると、まだまだ改善の余地がありそうです。
今のGoogle翻訳の実力
英文契約書によく登場する用語について、実際にGoogle翻訳を利用してみました。
「AGREEMENT」:契約、契約書、同意、合意などを使った文章
【原文】
本契約は、A社とB社との間に2019年2月1日に締結される。
【Google翻訳】
This agreement is to be concluded on February 1, 2019 between Company A and Company B.

やはり、少し機械的と言うか不自然ですよね。
人間が訳すとしたら、This agreement is made and entered into this February 1, 2019 between Company A and Company B.
といったように、「agreement」に対しては、「締結された」を意味するmade and entered intoを使う方が相手側に伝わりやすいです。
「TERMINATION」:契約の終了、解約、解除などを使った文章
【原文】
A社は当契約の終了時にそれらをB社に返すことに同意する。
【Google翻訳】
Company A agrees to return them to company B at the conclusion of this agreement.

人間が訳すとしたら、Company A agrees to return them to company B upon termination of this agreement.
といったように、契約書に関しての終了や解約などは、「TERMINATION」を使う方が人間らしいと言えます。
5・6年前とは比べ物にならないくらい精度が高くなっているとはいえ、契約の意味を解釈した日本語訳となると、もう一歩のところですね。
契約書に使われる独特な言い回し
ビジネスにおける英文契約書の作成が難しいとされる理由の一つとして、契約書に使われる独特な言い回しや単語の活用があるという点です。
日本語で作成した契約書を機械翻訳ツール然り、そのまま英文に翻訳しただけでは、内容に齟齬が生まれ、トラブルの原因につながってしまう危険性があります。
契約書の英文用語と日常用語の訳し方の違い
例えば、considerationは英文契約として訳す場合は「約因」とされますが、日常用語としては「考慮」と訳されます。
また、partyは英文契約としては「当事者」「全当事者」と訳されますが、日常用語としてはワイワイ盛り上がる「パーティ」と訳されるのが一般的です。
単数系と複数系の違い
単数のconditionは「状況」と訳されますが、複数のconditionsは「条件」として訳されます。
また単数のsecurityは「担保」と訳されますが、複数のsecuritiesは「証券」などと訳されたりします。
このように、英文契約書として用いられる英語は、日常的に使用される意味と異なり、特別の意味を持ってくることがあります。
契約書を翻訳する際には、文章内で使用されている各用語について十分理解したうえで翻訳を進めていくことが求められます。
Google翻訳やその他機械翻訳ツールは、一般用語として英訳されることが多いので、契約書作成としてはまだまだビジネスでは活用することが難しいと言えます。
翻訳の神髄とは
機械翻訳ツールを使用したり英語が得意な人間が翻訳するとしても、辞書や用語集で見つけた単語をそのまま流用してしまうと、異なった意味合いで捉えられてしまい、相手側はサインを拒む可能性もございます。
翻訳とは、辞書にある訳語を見つけて組み合わせるといった単純な作業ではありません。
翻訳対象となる文章の意味合いを十分に理解した後、その内容を法律や英米法などに基づいた専門的な英語に組み立てなおす作業と言えます。
国際取引だからこそ生じるリスクの考慮
英文の契約書を作成する時はまず日本語で契約書を作ってからその後英文に訳すのが基本です。
しかし、海外の企業と交わす契約書の場合は、日本語の契約書の段階で様々な国際リスクを考慮したうえで、作成する必要がございます。
具体例としては、
・英米法の考え方に従順しているかどうか
・暴動による道路などの閉鎖、輸送不可についての記載があるか
・為替相場による損失についての記載があるか
などです。
特に英米法では、紛争の解決に際して過去の同様の裁判の先例に拘束される判例法スタイルをとっており、すべての法律が整備されているわけではありません。
そのため、考えられるすべてのリスクについて契約書の中に盛り込んでおくことがトラブル回避につながります。
例えGoogle翻訳やその他機械翻訳ツールの精度が向上しても、それを訳してもらうための人間の専門的な知識が必要となり、素人にはかなりハードルの高い作業と言えます。
作成しただけで終わらせないこと
日本語の契約書でさえ作成するのは難しいものです。
それを前述の独特の言い回しや英米法・国際取引だからこそ生じるリスクを考慮しながら日本語で考え、さらに英文で作成するのにはかなりの労力を費やすことになります。
そのため、英文契約書の作成が完了しただけで、業務がすべて終わったかのように錯覚することもあるでしょう。
しかし、英文契約書の作成はあくまでビジネスのスタートであり、最終的なゴールではございません。
その契約書をもとに、取引先との交渉や今後のビジネス展開をしていかなくてはなりません。
英文契約書の準備に必要以上の時間や労力を割かないようにするためには、やはり英文契約書に詳しいプロの翻訳会社や弁護士などの専門家に依頼して作成してもらった方がよいでしょう。
特に技術に関するライセンス契約などの場合は、情報セキュリティの観点からも、より専門家の高度な翻訳技術、そしてリーガルチェックが必要となってきます。
英文契約書専門の翻訳会社はこちら
今まで述べたように、Google翻訳を使って契約書の英文翻訳を作成することは不可能と言えます。
理由として、Google翻訳は一般的な英単語で訳すことが多い・単数系と複数系の違いを文章のニュアンスで読み取ることが不可能・そもそも人間の専門的な知識がないと海外企業と交わす契約書を作ることが出来ないといったことが考えられます。
そのため、例え社内に英語が強い人がいても、法律に則って間違いなく英文契約書を作成することはなかなか難しいです。
その場合はプロの翻訳会社など、専門家にお任せするのが一番と言えます。
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